〜第4章〜 黒の男


[15]昼3時37分


僕は内ポケットからパルスを取りだす。

「バトルモード、移行開始」

すぐに僕は変身しおわり、僕の右手に白銀の銃、ライボルトが現れる。
白のコートに、青い瞳、それがライボルトに写った。

「きゃ〜相沢くんって、バトルモードになったとき、とってもカッコいいですよ〜」

「ん、そうか?」

青い瞳は好きだけどな。

《戦闘というものは、経験を重ねることによって強くなります。どんな状況であっても体が瞬時に、的確に動かなければなりません。いくら私の力を引き出すことができても、個人のポテンシャルが弱ければ力を十分に発揮することができないのです》

格闘家はもちろん、何らかのスポーツをやっているアスリート、もっといえばギターやドラムや和太鼓などの音楽ゲームでもそうであるように、経験を積めば勝手に体が動くという状態になる。頭で考えなくても的確な動きをするようになる。その為には脳ではなく、体に動きを記憶させなければならない。それは、戦闘でも同じ。よくRPGで「経験値」という言葉を聞くが、なかなか言い得ている言葉と言えよう。

「と……いうわけで、今日は?」

《今日は私、直々が相手しましょう》

え?
いや、パルスは今ライボルトになっているじゃないか。どうやって?

「そうですね。もう19日まで2週間をきっちゃいましたし。相沢くんは今までの頑張りのおかげで、基礎的なことはバッチリだよ!」

でも今までは、なんていうか、体育の時間と余り変わらない内容だったんだぞ?

長距離走り続けたり、筋トレしたり……。
今日戦うって言っても……完全に尻込み状態だぞ?

《今日は、とことん付き合って貰いますよ。その為にはハレン、貴方のステラの魔力が必要なのですが》

「ステラを? 何を始めるの?」

そう言いながら、ハレンは首にかけているステラを外す。

《ボ……ボクが?》

気弱そうな男の子の声がする。この声は滅多に聞けないステラのものだ。

《今から私の魔力とステラの魔力を合成し、ユウとハレンを、ユウの深層心理へと飛ばします》

「な……なんだよその深層心理って」

《私とユウが初めて契約した時を覚えていますか?》

「え……うん」

《その時に、貴方は一瞬だけ、薄青い世界を目にしたはずです。そここそが、貴方の深層心理です》

「なるほど、そこならパルス……え?」

ハレンは首を傾げる。
「相沢くんって、パルスの姿が見えるの?」

「うん。一番最初に見たよ」

「えええっ! 本当ですかあ? どんなのどんなの?」

「羽衣をつけていて、今の僕と同じで瞳が青かった。若い女の人だったよ」

「へえ〜でもそれって凄いことじゃないですか。先輩でも見ることは出来ないんですよ?」

「そんなに凄いことなのか?」

「すごいよとっても! は〜わたしもステラの姿が見えたらなあ〜」

《……えっ》

「一度ステラと向かい合っていろんな話をしてみたいですよ〜」

《そう……なんだ》

「やっぱり、同じタイムトラベラーになったら、愛着とか沸くのかな」

僕は言った。

《……!》

「うん! わたしはステラのこと、大好き! 友達だよ。いつも寝る前に、ステラといろんな話をするんだ〜。だから相沢くんも、きっとパルスと仲良くなれますよ」

《………!!》

「そうか……パルスとね」
《っ!!》

「パルスと……」

《あ、あの》

「何だ? パルス」

《そ……そろそろ始めてよろしいでしょうか?》

「いつでもいいよ」

《あ、はい。分かりました。それでは……》

何でちょっと動揺してるんだよ?

すると

僕の体がぐるぐる回る。いや、景色が回っている。
体が回っているように脳が錯覚したのか、僕の体がぐらぐら傾くような感じがする。その遠心力によるものか……僕の魂が外に出てしまいそうだ。幽体離脱〜じゃないけど、ちょっと、気持わるい……うえっ

パルス?
ハレン?
どこにいるんだ〜?
どこ〜?
どこに……
いるん――――




ゴトッという音が僕の心の中に響いた。その音で意識がハッキリしてくる。
何だか……気持ちいい。
肌寒く無い清涼な空間だ。空気は、自然のままの小川を思わせる味がする。おもいっきり深呼吸したいな。
「相沢くん!」

体がユサユサ揺れる。
それで体の神経もはっきり機能し始めた。
目をゆっくりと開ける。
輪郭が、ぼんやりと見えてきた。
あれ……ハレンって、こんなに丸顔だったっけ。
まだ、頭が本調子じゃないのかな……丸い輪郭が二つ……。

ん……はっきりと、視界が戻った!!

「ん……ハレ」

僕は気づいた。
ハレンの顔を見ながら話しかけたつもりだったが、今しがた顔だと思っていたものは、ハレンの……ふっくらでもちもちの……。

「相沢くん?」

焦って視線を上に上げた。目が覚めたらそれですか。さいですか。

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