〜第2章〜 扉


[04]夜7時14分


それが自分の未来を切り拓くことになるし、自分以外の沢山の人間の未来を守ることになる。そして未来人のハレンも過去が変わり救われるかもしれない。

ハレンが救われるのなら、僕を含めた人類皆の未来を変えられるのなら、そしてその役目が僕に相応しいというのなら…。












「……パルス」

「なんでしょうか。」

「君の言葉を信じるよ。」

「……それは。」

「…戦う。」

「…それでは…あなたは………。」

「ああ、パルス。君と契約してタイムトラベラーになるよ。」

「よろしいのですか?タイムトラベラーは相応の覚悟が無ければなれるものではありませんし、途中で放棄することも許されない。それでもいいのですね?」



「……大丈夫だ。」



恐れの気持ちは無かった。自分でも分からないが、微笑んでいる。
なんだか不思議だ。
今なら、相手がどんなやつであろうと、真っ直ぐ突っ込んでいけそうな…。


「了承しました。それでは今刻より貴方を、レスティ=パルスとの契約者であることを決定します。


では右手を私の前に差し出して下さい。」

僕は言われた通りにした。すると
小さな体が僕の手の上に乗る。
そしてパルスは、

僕の手の上でうつ伏せに横になった。

「え…?ちょっと…。」

パルスは目を瞑る。
人間のような温もりを、
僕の右手を通じて感じる。
パルスは息があがり、肩で息をしている感じだ。しばらくしてパルスは目を開けるが、その目は虚ろに視線を宙に泳がせている。

「お…おい。大丈夫か?」

パルスは答えないが、再び微笑んだ。


その笑顔は「大丈夫です」と思っても構わないんだろうが…

なんか…

今のパルス…

色っぽい……。







「……それでは……契約を開始…します……。」

かなり苦しそうだ。

「……くっ……うぅ……。」
パルスは絞り出すような声を出す。







すると僕の右手先から、

熱い何かが流されていくのを感じた。

すぐにその感覚は全身を駆け巡った。

余りにも熱く、僕も自然と汗が流れる。

「………意識を…1つに……保って……ください……。」

パルスは更に息が上がる。

「あぁ……はぁ…はぁ……
ああああっ……!」
パルスが迫るような声で
僕の頭に響く。

僕も体温が急激に上がり、倒れそうになる。
体温が42℃を越えているのかもしれない。
「もう少し……です…。…が……がんばって…ください…!」

僕は大丈夫だ…。
それよりもパルスが大丈夫なのか…?


「あ…!…あ…!…ひあっ……!

ああああああああっ!!」
悲鳴に近い声。

その途端に…!






目の前の景色が急に変わった。


360度全てがクリスタルブルーの世界だ。鏡が何枚もあるようで、僕の姿が乱反射してあちこちに写る。


涼しい…。

熱い体が徐々に冷めていく……。


すると、

「パルス……!」

親指程の大きさだったパルスが…。

僕の肩ぐらいの大きさになって少し離れた所にいた。

僕は彼女の元に向かって走る。

彼女は僕の方に手を伸ばし、まもなく手が触れ合う所で…

――再び真っ白な光に包まれていった―――






















まどろんだ意識の覚醒。

いつのまにか閉じられていた目が開かれていくのが感じられた。

目を開けるとそこにはいつもと違う光景が広がるだろう。

目を開けるとそこには新たな世界があるのだろう。



この瞬間に僕は日常と非日常を行き来するようになった。


ただ、其を求めていたのだ。

目を開けると、そこには…
「……。」

元の世界が広がっていた。普段通りに車が往来し、目の前の信号が赤から青に変わったところだった。

「…夢……だったのか?」
いや、違う。なぜかって?

右手にはまだ温もりが残っている。

そして

僕の首にはタイムトーキーがつけられていた。



《聞こえますか?》

「パルス…どこにいる?」

《タイムトーキーの中です。貴方と私の心を繋いだので、随時あなたと会話ができます。》

「…分かった。よろしくなパルス。」

《はい…。
ところで、今後貴方のことを何とお呼びすればよいでしょうか?》

「あ、名前を教えてなかったっけ。僕は相沢悠だよ。」

《…では、貴方のことをユウと呼ばせて頂きます。》



とまあ、こういうわけで僕はタイムトラベラーとなったのだった。

ここまでは、まだ物語の前置きって所だ。面白くなるのはここから。

2007年4月11日午後7時14分
相沢悠という人間の別の顔。

タイムトラベラーとしての悠がここに誕生したのであった。

歪曲現象の検知は無し。

さて、タイムトラベラーとなった相沢悠に、

どんな未来が待ち受けているのだろうか?


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