〜第2章〜 扉


[10]2000年3月9日 午後8時30分A


清奈はタイムトーキーが持ってきたその本を受けとる。

「ごくろうさま。」

そう言って、清奈は床に本を置き、何千ページもあるであろうその本を開いた。タイムトーキーは再びそれぞれのマスターに戻り、首にかけられた。

ページを捲る音だけが聞こえる。

「あったわ。」

清奈がそう言ったので、僕とハレンはそのページを見た。

清奈が指を差している所に【2000年3月9日 午後8時30分…第7出口…】

その後に、

【6*2881*97#55】

と書かれている。

「これでパスワードは確認したわ。では、時空転移を始めるわよ。」

…ついに時を渡るのか。

ところで、どうやってやるんだ?やはりタイムマシンみたいに乗り物に乗るのか?


すると


「悠、携帯電話を出しなさい。」

急に清奈が言った。

「え…携帯電話?」

携帯はちゃんと今持っているが…これと時間転移に何の関係が?

「早くして。」

急かされたので、僕は慌てて携帯を取り出した。

僕の携帯は最新型の2、3世代程前の物だ。最近の携帯は財布代わりになったりテレビが見れたりするらしいが、僕は電話とメールとネットしか使えない。四角形のシルバーだ。
「で、どうやって時間転移するんだ?」

ハレンも携帯を取り出した。白くて丸っこい、最新型の携帯電話…。ハローキティのストラップを付けている。

「さっき先輩が指差ししていた所に、数字が並んでいたでしょう?」

「えっと…これか。」

【6*2881*97#55】

「この番号に電話すると、書かれた時間に行くことができるんですよ。」








「……マジで。」

「嘘じゃないですよ。やってみれば分かります。」

電話すると時を渡る?
間違い電話したら酷い目にあってしまうな。
まあ…やってみよう。

僕は携帯に6*2881*97#55と入れて、間違っていないか何度も確認した後…

一回深呼吸して…

受話器の上がっているボタンを押した。

すると

目の前の空間が歪み始めたのだ。
ハレンや、清奈が段々と歪み…脳の中が捻れるように締め付けられる。

う……気分が悪い……
意識が……飛びそう…!!

無重力空間にいきなり放り出されたようだ。
金色の時計が360度全方位に現れ、秒針の音が響く。そして僕の体は、物凄く強い力で流れていく…。

高いところから、体が

鈍い音を立てて落下した。








う……
目が覚める。
ぼんやりとした視界がはっきりと戻り、ハレンの顔がはっきりと写る。

「あの、大丈夫ですか?」ハレンが心配そうに聞いてきた。
大丈夫だが…重い頭痛が…

するとハレンは

「痛いの痛いの…飛んでいけ〜!」

あのつぼみが開くような笑顔で
僕の額をなで…

「………な!」

ま・た・も
心臓バクバク…

「う〜ん。顔色悪いですよ?」

そうかもしれないが、
顔を覗きこまないでくれ。

ハレンは見た目は幼い赤ふちメガネの女の子。

そして、世の男どもをドキドキさせるあの部分が、結構なレベルで発達しているのだ。

だから、顔を覗きこまないでくれ。
その部分に目がいってしまうだろう…!
そこは絶対不可侵エリアだっ!

「?」

ハレンは顔を傾げる。
「相沢くん…顔色が悪いと思ったら、今度は赤くなってますよ?」

うあ!!

「あ…いやいやいや、何でも無い!も…もう大丈夫だから…離れてくれ…頼む。」

あぶねーっ!!
一瞬本当に堕ちかけたぞ。よく理性を保ったな、僕の精神力に感謝。


「呆れた。」

清奈の声が唐突に聞こえ、ハッと我に返った。

「ふ〜ん、お前はそういうのが好みなのね。」
「いや、違う、清奈、これは…!!」

「誤魔化すの?今更無駄よ。私はしっかり見ていたから。」

「なっ……!!」

ハレンはよく分からないらしく、まだ首を傾げている。

「先輩…そういうのが好みって、一体何の事ですか?」

清奈は僕に

きつ〜い軽蔑の視線を浴びせた後に

「どうやらこいつはね。お前の…」
「わあああああ!
言わないでくれえええ!」






こんな情事があったのだが、僕は時渡りに成功したようだ。先程の携帯電話を見ると確かにそれが分かる。
「今は、今から7年前ってわけだな。」

「そうですね…じゃあ相沢くん、行きますよ。グレームドゥーブルへ!」

「おう!」

僕とハレンが外に飛び出していった。







「フェルミ、何かを感じるわ。一体どういうこと?」

「私も想像がつかない。ただ、今回は何者かが隠れていることは私にも分かる。ユウに危険が伴うやもしれん。」

「関係ない。自分の身くらい守るでしょうし。」

そう会話を交しながら、不可視空間から出ようと階段をのぼっていくのだった。





「うわ…本当に時渡りをしちゃったんだな。」


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