side story


[01]太古の歴史@



 かつて神と呼ばれた一族が世界を支配していた。


 二つの世界を治め、万物を統べる事を使命として世を平定していた。だが、一族の一人、たぐい稀な才を持つ者がパンドラの箱を開けてしまった。



 その箱は代々一族に守られていた秘宝だったのだ。伝承によれば、それは混沌を招く悪魔。またの名を無限の欲望と言う。




 それ以来世界は一変した。



 神として恐れられた者たちのうち争いを好み、禁術へと走る輩が現れたのだ。

 元凶者は混沌の闇に惑わされ、破壊の限りを尽くさんとする統率者となった。



 残された一族はある決断を迫られた。




 このまま死ぬか、戦うか。



 彼らはヒトと呼ばれる存在に力を与える事で戦う事を決めた。



 一族に続いて劣るとも勝らぬ存在であるヒトに託したのだ。


 この戦いで生じた深い悲しみと怒りを力に変える。




 とても容易なものだ。




 同時に、それが落とし穴にもなり得る。



 力を求めすぎて混沌の闇を求め始める者が現れた。

 だが、一族と契約を結んだ戦士達はひるまなかった。




 躊躇する事なく命を奪う選択をしたのだ。





 そして熾烈を極めたある日――。


「アストラル、このまま敵の将を刈るぞ!」

『心得た、ゼスク! 昇華炎熱――』

「火炎車!」


 ゼスクと呼ばれた若い男は両腕に突如現れた炎を二振りの刀のように扱い、敵を一掃した。


「見つけたぞ、グレンシーア!」

「カカカカカ。貴様ニ見ツケラレタカラト私ガ殺サレル事ハナイ」


 馬のような生き物に乗り、鎧兜を装備した骸骨のような武将は奇妙な声で言い放った。



 その手にある刀は怪しいほどに輝いている。


「我が同胞の恨みだ!」

『待て!』


 相棒の制止を受けてゼクスは素早く後ろに飛び退いた。


 直後、彼がさっきまでいた場所の地面が切り裂かれる。


「妖刀だと……?」

「ソノ通リ。コレハ血ヲ吸イ力ヲ得ル事デ強クナル業物。怖ジケヅイタカ?」


 妖刀と分かった以上不用意に近付く訳にもいかず、ゼクスは後退りしながら間合いを取り始めた。


 そして一呼吸おいてから唸る炎の刀を構え直したその時、


「サンダーソニック!」


 背後から肩越しに電気を帯びた衝撃波が飛んで来た。


「グァ!」


 間髪を入れずに武将は地面に落ちて、ぐったりとしたまま動かなくなった。



 その一連の状況に呆気に取られていたゼクスだったが、すぐに我に返ると、


「セフィリア! また邪魔をしたな!」

「あら? てっきり誰かさんがじり貧だったから助けたのだけど、違ったかしら? バルザール」

『いーや、違ってねえなあ。キヒヒヒッ!』


 セフィリアと呼ばれた若い女性は小馬鹿にしたように笑い、バルザールと呼ばれた銀色の小型の拳銃から不気味な笑いが聞こえた。


「なっ………!」


 あながち嘘ではないので、反論できずにいるゼクス。

 そこへ彼の腕の刺青が淡い赤に輝き、アストラルが口を挟む。


『事実は素直に認めよ!』

「あんな高飛車の指摘を誰が大人しく認めるかよ」


 ゼクスは邪険にして三白眼を睨む。



 対するセフィリアは悪戯っぽい笑みを浮かべると、


「可愛い気がないわね。それだから皆に怖がられるんだぞ」


 後半部分をまさに女の子らしく言い、ゼクスに近寄った。


「……………」


 ゼクスは多少睨み付けるような目付きをしながらも彼女の身体を自分のもとへ抱き寄せる。


「ん……こういう時は優しいんだから」

「うるさい」


 そして二人は確かめ合うように互いの唇を重ね合った。




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