第三章 迷い〜そして戦場へ〜


[09]第四五話



「降下ポイントへ到達! ハッチ、開きます!」


 ヘリコプターのパイロットがそう言うと、機内後部の床の一部がゆっくりと下がり、ハッチが開いた。


「タスクフォース特殊支援要員、如月耀、行きます!」


 如月はそう言うと、勢いよく空中へ飛び込んだ。


『来るぞ!』


 アストラルの警告と同時に、敵の航空戦力が攻撃を仕掛けてきた。


「墜ちるか!」


 如月は魔法障壁を展開して、魔導弾による撃墜を逃れる。




 しかし、敵は空だけでなかった。


「うおっと!」


 地上からの火炎弾を、魔導弾で迎撃した。



 だが、一発そこらの攻撃ではない。



 ありとあらゆる方向から如月は猛攻を受けていた。




 降下ポイントでの高度は約五千メートル。



 あともう少しで地に触れる事ができるのだが、地上に近づくに従って攻撃は激しくなる。


「アストラル。着地は問題ないよな?」

『貴様がそう望めばな』


 残り千二百メートル。




 秒単位に換算すると、三十秒もない。


「逆噴射、開始………!」


 如月は地面に向かってマグナムを向けると、引き金を引いた。




 すると、高密度に蓄積された魔力が一気に放たれ、巨大なビームとなって地面を穿った。



 その時に発生する反動を利用して、落下速度を落とすと、ビームが消え去ると同時に如月は足を地につけた。


『ひとまずは成功だ。だが』

「囲まれたな」


 如月の周囲を、杖を構えた集団が取り囲んでいた。



 そのうちの一人、恐らく隊長格に相当する人物が、


「戦闘継続意思がない場合は、武器を捨て両手を後頭部につけろ」


 と如月に向かって言った。



 如月は相変わらずの無表情で、左手を少し前へ出した。



 その指はマグナムの引き金に引っ掛かるようにされており、銃口は力無く下を向いている。




その時、突風が舞い起きた。



 取り囲んでいた敵は、思わず腕で目を守った。



 だが、彼らはそこで自分達の判断の誤りに気付く。


「がっ!」

「うわっ!」

「ぎゃっ!」


 狙い撃ちにされ、突風の一瞬で半数近くが倒れたのだ。


「大丈夫か? しっかりしろ!」


 先の男が、そばに倒れていた仲間の安否を気遣った。


「隊長、やつが逃げます。追わないと………」

「おい、しっかりしろ!」


 介抱されていた仲間は、ゆっくりと目を閉じると安らかな表情になっていった。




 なんて事を……!



 しかし、悲しみと怒りにくれる間もなく、部下が報告する。


「敵は社に向かいました。急がなければ、追いつけません」

「分かった。行くぞ」


 隊長は倒れた仲間の手を胸で合わせてやると、ゆっくりと立ち上がった。


 そして足を踏み出したその時、


「待たれよ!」


 背後から鋭い女性の声がした。


「我が名はアリア。義によりそなた達に助太刀いたす!」


 ややかしこまった口調でアリアはそう言い、隊長の前までやって来た。


「何者だ?」


 いきなり加勢すると言われても、敵の間者であるとも否定しきれない。



 だから隊長は態度を硬化した。


「あの男は私の仇敵にくみする輩であります。ゆえに、任せてはもらえないでしょうか?」

「…………」


 隊長はアリアの目を睨むように見た。




 だが彼女はひるまない。



 人は、嘘をつくと顔や目に変化が現れるという。




 ならば、


「いいだろう。今、その仇討ちの義を果たせ。我々は決して介入しない」

「ありがたき幸せ!」


 そう言うと、アリアは物凄い勢いで走り、森の中へ消えていった。



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