第二章 動きだす運命


[21]第三五話



「贖罪の犠牲を求める」


 如月は瞬間的に剛田の背後に回った。

 直後、魔力弾が三十発以上も現れた。


 剛田は反射的に魔法障壁を展開する。


「受けよ。罪の報いを」


 如月がその場から離れると同時に魔力弾の嵐が剛田を襲う。



 それは蜂の大群が天敵を集団で攻撃しているかのような残酷さだった。


 障壁を展開していたが剛田だが、その威力に絶え切れなくなったのか障壁自体に亀裂が走る。

 そして綺麗な破片となって地上へ飛散した。


「グオォォォオオォォ!」


 苦痛の叫びを上げる剛田を中心に、その周囲の空間がホワイトアウトした。



 刹那の間を置いて起きた爆発。


 それは空間結界の障壁を、壁紙を引き剥がすように破壊し衝撃波を撒き散らした。

 爆発地点の真上から結界の効果は薄れていき、青空が戻り始めている。


 その中で、アスファルトに俯せに倒れている者がいた。



 剛田である。
 その顔は、何ごともなかったかのようなひどく落ち着いた表情をしていた。



 そして、彼に近付く者がいた。


「死をもって償うがいい」


 如月はマグナムの銃口を剛田の頭部に向けた。



 トリガーに掛かったその指に力が込められ、引き金が引かれたその瞬間、


「もう止めて!」


 悲痛な叫びを伴ったネルフェニビアが如月に抱きつく形で飛び込んできた。

 その衝撃で如月は地面に腰から倒れてしまう。


「お願いだからもう止めて! こんなの……こんなの耀君じゃないよ! 元に戻って!」


 ネルフェニビアは涙を流して叫んだ。



 数秒の沈黙のあと、ネルフェニビアの思いが通じたのか、


「我が、約束は……果た、された………」


 如月はそんな事を呟いて意識を失った。


 その顔は先までの禍々しいものではなく、とても穏やかなものだ。



 ネルフェニビアは涙を拭うと、無線通信用のインカムに向かって言った。


「こちら後方支援要員、ネル。プランDに基づく戦闘継続不能に成功しました。また、如月隊員が負傷したので救護班を大至急回して下さい」

『こちら司令部。了解しました。ネルさん、本当にお疲れ様です』


 応答したキサラの声を聞くと、ネルフェニビアはほっとしたらしく、地面にぺたりと座り込んだ。


 救護班を連れたヘリコプターは、二分後に到着したらしい。



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