鋼の錬金術師《長編》


[02]太陽と月*@


黒い、
しなやかな髪が
陽の光でキラキラと反射している。


「追い付いてこい」


あぁ、我慢してるな・・・
俺にはわかる。

あんたのちょっとした仕草で、
今何を考えてるとか

何をしたいかとか。


当たり前だ。




ずっと、
見てきたのだから。













いつも、俺だけ。









本当、運わりぃ・・・。




『ハボック・・・』



そんな眼で、見るな。



『捨てられないのよ、あの人は』




そういう風に
眉をハの字に下げながら、
金髪の女性は言っていた。








「甘いよ・・・」








あんな顔で。







あんな声で。







焦げた腹が、

チリチリと痛む。








「・・・忘れようと、決めたのに」


そう呟きながら窓の外を見遣る。


「あんたは、上を目指す人間、なのに」










煙草の灰が落ちそうに
なっていることにも
気がつかなかった。


「あっ!ちょっとハボックさん、
危ないですよ」


様子を見に来た看護婦が
今にも俺の口許で
落ちそうになっている
煙草に灰皿を寄せた。


「・・・あ、すんません」


「気をつけてくださいね」






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