風船ガム


[06]6


 小さい頃、風船をかき集めて空を飛ぼうとしたことがある。
 当然、小さい子供が集められる程度のものでは空は飛べない。

 諦めた瞬間、風船は手を離れ空へ消えていった。



「何食べてるの?」

 俺がガムを差し出すと、少年は不思議そうに覗き込む。
 あまりにも興味津々に覗き込むので、1つだけ取り出すと、

「?」

手に握らせてやる。

「食べて、いいの……?」

 恐る恐る尋ねる少年に俺が肯くと、彼はがっつくようにガムをくわえる。

「甘いね」

 少年がそう言って笑うと、とっくに味が無くなっていたはずのガムも、甘くなっていく気がした。

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