風船ガム

[05]５

　川の中で鯉が群れる。元を辿れば、それは捨てられたモノ。
　浅い川に鯉の群れ。

＊

「何してるの？」

　後ろから聞こえた声に振り返れば、先程の小学生。
　何してるの？わかるだろう。何もしてない。

「面白い？楽しい？」

　そいつは俺の返事を聞くことなく、質問を投げつけてくる。

「鯉いるね。あれ美味しい？」

　ガードレールから身を乗り出し覗き込む様子は、端からみていると危なっかしい。
　鯉――食べれなくもないが、きっと……いや絶対不味い。

「綺麗だから、きっと食べても美味しいよね」

　綺麗な物には棘があると、少年はご存知か？

「お兄ちゃん、なんて名前？おれくうと！空を渡るって書いて空渡！」

　空を渡れたら、どれだけ幸せだろうか。

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