ガイア


[22]ガイア


「何だ…これは」
ライアックが呟く。
そこは今まで居た薄暗い部屋ではないようだった。ヘルメスを中心に、ただ白い空間が広がっていた。
そこに、ライアック、ハインリヒ、そしてグレイスの姿があった。
「ヘルメス、なんだこれは!」
ハインリヒは叫び、ライアックはきょろきょろと辺りを伺う。すると、今まで血塗れでうずくまっていたグレイスが立ち上がった。
「…ガイア…」
グレイスが呟く。
「ガイアの声が聞こえた…」
立ち上がったグレイスの傷はすっかり塞がっていた。
「ガイアの声だと?」
ハインリヒが反応する。
「今なら…あなた達にも聞こえるはずです。外に居るあなた達の仲間にも、扉の外に居るビアッジさん、ハンさん…そして…エスポワールの人達にも。」
グレイスがそう言うと、ハインリヒと共に居た者達、ビアッジとグレゴリオ、そして、シズル、セシア、ミリアを始め多くの人々の姿が浮かび上がった。
「精神感応…だと?」
ライアックが声を出した。
「グレイス…?」
セシアとミリアだった。
「ミリィ!」
シズルがミリアに走り寄り、ミリアを抱きしめた。
「ちょっと…みんな見てる…」
ミリアは辺りを気にしながらも、笑顔でシズルを迎えた。そんな二人を置いて、セシアはグレイスの許へ走って行く。
「セシア!」
「グレイス!」
グレイスがセシアを受け止める。
「バカっ!携帯つながらなくて…心配したんだからっ!」
「ごめん。今度ミルクレープおごるから。」
グレイスはセシアを胸に、力強く、優しく抱きしめた。
「そんなこと…えっく…」
セシアはグレイスの胸で泣いた。

「どういう事だ!グレイス・サタニー!」
そんなやわらかい空気を、ハインリヒの怒声が引き裂いた。
その問いに、グレイスは振り返らずに答えた。
「聞こえませんか?ガイアの声が。」
「声、だと?」
「あなたにも聞こえるはずです。」
グレイスがそう言うと、白い空間にそっと一筋の風が吹き、穏やかな声が聞こえてきた。

「―地球の子、そして希望の子らよ。私の声が聞こえますか?」
その声は優しく温もりのある、女性の声のように聞こえた。
「私はガイア。万物の母たる始祖。―そして、人類を導き、見守る者。」


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