ガイア


[17]プロローグ


―西暦2123年。

化石燃料の枯渇に伴い、中東各国は中東連合政府を樹立し、大国への石油輸出規制を採択。石油は21世紀の10倍以上の価格で取引され、中東各国は急激に国力を蓄えていく。
それに対しアメリカは、国連を通し化石燃料の適正価格取引を要望するも、既にアメリカに並ぶ国力を得た中東連合はその要望を拒否。ロシア、中国の後押しを得て、その強硬姿勢を崩さなかった。

同年、アメリカ、ワシントンDCにて地下鉄主要駅などを標的にした連続爆破テロ事件が発生。アメリカ政府は、テロは中東に拠点を置く国際的反政府組織によるものと発表。
中東連合に反政府組織の情報開示、組織メンバーの逮捕、身柄引き渡しとアメリカ国内での裁判を要求した。
だが中東連合は要求を拒否。後に中東連合は国連を脱退、アメリカとの冷戦状態に突入した。

そんな状況下、中東を訪れていたアメリカ人フリーカメラマンが現地のテロリストによって殺害される事件が起きた。
この事件をきっかけにアメリカは中東連合への政治的圧力をかけ、「犯人グループの身柄引き渡しに応じない場合、正義の名に於いて裁きを下す」旨の声明を発表。事実上の宣戦布告であった。
これに中東連合は真っ向から対峙。欧米への石油禁輸政策を強め、更なる強行姿勢に出た。

同じ頃、150年に渡るアメリカ支配下にあったイラクで、反米デモに参加した一般市民が駐屯米軍と衝突。50人以上の死者と、300人以上の負傷者を出す惨事となった。
この事件を皮切りに、中東連合とアメリカは本格的な武力衝突へと発展することとなった。

半年に渡る戦争の末、本来「抑止力」であるはずの核が、中東、アメリカ双方から放たれた。
それに便乗しロシアはアメリカへ、中国、南北朝鮮は日本へ、それぞれ核を放つ。
放たれた核は地を焼き空を焦がし、世界中に灰の雨を降らせた。

地球上の生命の80パーセントを滅ぼし、戦争は勝ちも負けも無い最悪の結果で終わった。
荒んだ環境は生態系に異常を来たし、疫病が蔓延し、死が世界を襲った。

わずかに生き残った人類は、荒廃した地上を捨て、地下深くへと逃げていった。しかし、地下での生活は決して楽なものではなかった。
それでも、人類は生への執着を捨てずに、新たなる希望を得た。

人類は逃げ込んだ地下深くで石で作られた巨大なオーパーツを発見する。
それから実に70年の時間をかけ、遺されたわずかな科学力でオーパーツを解析。それが古代文明の遺した演算装置、スーパーコンピューターであることを突き止め、そのコンピューターに「ヘルメス」の名を与えた。
そして人類はヘルメスを模し、ヤハウェ、シヴァ、ガイアの3つのコアターミナルコンピューターを抱える移民船を建造。新天地を宇宙へと求めた。

だがヤハウェを載せた移民船「ノア」は進水前に核融合エンジンが暴走、爆発。地下シェルターに居た避難民20000人剰りを道連れに消滅。
シヴァを載せた「ガンダルヴァ」は大気圏離脱の際に分散、爆発。
唯一無事に宇宙へ上がったのは、ガイアを載せた「ペガサス」のみであった。

宇宙へ上がった人類は、新天地に無事辿り付けるようにと、ペガサスに「希望」と云う切実なる願いを刻み、戦争の歴史を封印した。

その宇宙へ上った唯一の希望。
それが、「移民船エスポワール」である。



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