第43章


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 エンペルトの言い様に少々ムッとしたように、ドンカラスは虚勢を張った。
 まあ、実際の所は、楽しみにしていた名画劇場「極道の♀たち・三世代目姐」の録画に失敗し、
代わりに録られていた報道ニュース特集を仕方なく見ていたのだったが……それはさて置き。
「そうそう、それで思い出しやした。あの幽霊騒ぎの時の、髪の長え方の女の子……どうやら、
その新チャンピオンと知り合いらしいですぜ。インタビューの時、隣りに映ってたっけなあ」
 やり返そうと、今度はドンカラスがニヤリと笑いながらエンペルトを窺う。
「ヒカリちゃんが?」
「へえ、それにちらっとでやすが……あのお嬢さんも一緒にね」
「……え……」
 またしても“急所”を突かれ、エンペルトはギクリと表情を強張らせた。
「それから、チャンピオン手持ちのドダイトス……さっき言ってた、お前さんの友達じゃねえかと
思いやすが……どっしりした面構えで、なかなか良い男振りじゃねえですかい。
お嬢さんと随分仲良さげで、何やらいい雰囲気でやしたっけねえ。へへへ」
「?!」
 その途端、ビシィッとエンペルトが凍りついた。明らかに効果は抜群のようだ。
「そ、そそ、そりゃ……彼だって、か、彼女とは研究所からの、お、幼馴染だポチャからして……
た、立ち話ぐらいは、してもおかしくないポチャからして……」
 思わずしどろもどろになるエンペルトに、ドンカラスは更に畳み掛ける。
「しかしねえ、遠くのつれねえ、しかも酔った勢いで何しでかすか分からねえ男なんざより、
近くにあんな頼もしそうな男がいりゃ、いくらあの気の強えお嬢さんだって、ついフラフラッと……」


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