第43章


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――「ふうん、その子達は今頃どうしているんだろうね」
「さてねえ、どうなってる事やら。何せ、もうかなり昔の話でやすからねえ。
ま、一つだけ確かなのは、あのぶかぶかだった赤え帽子も、今ならピッタリなんじゃねえですかい」
「……赤い帽子?」
 ふと何かを思い出したように、エンペルトが呟く。
「そう言えば……あの子も赤い帽子だったなあ……でも、まさか……」
「ん? 何か心当たりがあるんでやすか?」
「うん、僕がボス達に初めて会った時、友達のナエトル……いや、今はもうドダイトスだけど……
彼の主人になったのが、赤い帽子の子だったのを思い出してさ」
「ああ、後にたった一人でギンガ団に乗り込んでったっていう、奇特な人間でやしょ?
その辺のこたぁ、トバリの連中の方が詳しいでやしょうが……まあね、あっしもその話を聞いた時、
ちらっと思い出しはしやしたが、そいつぁまったくの別人でさあ」
「え? ドン、彼を知ってるのか?」
「へえ、つい先日、そいつが最年少でシンオウのチャンピオンリーグで優勝したって、
テレビのニュースでさんざん騒いでやしたからねえ。でも、あん時のガキ共はそいつじゃねえや。
もっと年上だろうし、帽子の形も違いまさあ。ましてや、もう一人みてえな癖毛でもねえ」
 ドンカラスは杯を置き、フッと苦笑を洩らした。
「でもよ、ひょっとしたら、どこにでもそんな数寄者の一人や二人はいるのかもしれねえ。
だからきっと、あのガキ共も今頃……同じようにポケモンの為に働いてくれてんじゃねえのか……
へへ、そんな風に思うのも、あいつの影響かもしれねえでやすがね」
「そうか……そうだよね……でも、ちょっと意外だな」
「……何がでやすか?」
 エンペルトが意味有りげに笑うのを見て、ドンカラスは怪訝な表情をする。
「いや〜、ドンもニュース番組なんか見るんだ〜、と思ってさ〜」
「あ、あったりめえでやしょ?! 仮にもあっしゃあ、ボスからシンオウの管理を任されてるんだ、
人間共の動向も把握してなきゃお話にもなんねえ、ってもんでさあ!」

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