第43章


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『ちょっと預かってて』
 マフラー野郎はチビ助をあっしらにひょいと渡し、解いたマフラーを口にくわえて、
逃げる団員共に向かっていった。
 マフラー野郎はマフラーを残像の如く引き摺りながら何度か木々の間を迂回し、みるみる団員共に
迫っていく。そのままマフラー野郎は奴らを追い越し、その足元を素早く横切っていった。
「なッ!?」
 ほぼ同時、団員どもは何かに足を取られ――ピンとロープのように張られたマフラーだ――
盛大に体勢を崩す。即座にマフラー野郎は奴らの周りをぐるりと数回駆け巡り、仕上げとばかりに
思い切りマフラーを両手で引っ張る。瞬く間にマフラーがまるで蛇の如く意思を持ったように
団員共の体を縛り上げてしまった。
「な、なんだこりゃ、ぐっ、取れねえ!」
 じたばたと団員達はもがくが、人間の大人の力でもあの妙な生地はびくともしないようだ。
『無駄だ。良く鍛錬されたガブリアスであろうと、それを引き裂くには少々難儀するだろう』
 事もなさげに言って、あいつは『もう大丈夫だ』とあっしらを呼び寄せる。
『おまえ、ビリビリ以外もすっげーな! なんだ今の、どーやった!?』
 わくわくしながら子ニューラが問い掛ける。
『ああ、くさむすびって技のちょっとした応用というやつさ』
『で、このクソッタレ共はどうすんだ? まさか大事なマフラーをずっと縛っておくわけにはいかねえだろ』
 あっしが言うと、一斉に団員共に視線が集う。


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