第43章


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 埃が焼けるような乾いた臭いのする白煙がもうもうと立ち籠める。団員共は何が起こったのか
分からないって面をして、痙攣して転がっている自分の手駒達を暫し呆然と眺めた。
「ひ……」
 団員共はまるで化け物でも見るみてえに怯えた目でマフラー野郎を一瞥し、何もかも投げ打って
我先にと逃げていこうとする。その無様な背を、ラッタとゴルバットは地に伏せたまま成すすべなく
愕然と見つめ、深い失意と怒りの混じる声で呻いた。
 哀れな奴らだ。あっしも、もしも奴らの下に残っていたとしたら、いつかこんな風に使い捨て
られていたのだろうか。敵ながら、少しばかり同情する。
『子分まで見捨てて、あいつらやっぱりサイテーの中のサイテーだ』
 子ニューラは憤慨して言い、団員共を逃がすまいと刃物のように鋭い氷片を取り出して狙いを定める。
だが、すぐに横からマフラー野郎が氷片を子ニューラから取り上げた。
『あっ、なにすんだ。返せよぉ』
『ダメだ。人間相手にこれは怪我だけじゃあすまなくなる』
 せがむ子ニューラにマフラー野郎は首を横に振るう。
『むー、だからってあんな奴ら見逃すってのか? ちょっとガッカリだぞ』
『いいや、むざむざ逃がしてやるつもりもないさ――』
 出し抜けにマフラー野郎はするするとマフラーを解き始める。


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