第43章


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「まぁたガキのお出ましかよ。なあ、この辺は滅多に人が来ないから盗みに入るには穴場じゃなかったのか?」
 石をぶつけられた腕を痛そうに擦りながら団員の男は苛立った様子でもう一人に言った。
「その筈なんだがねえ。ガキと綿埃はどこにでも勝手に入り込んで来やがるから困り者だ。騒がれる前に
さっさと掃除しなきゃあな」
 乱入に一瞬怯んでいた団員達も、正体がガキと知るやいなや平静を取り戻し、二人まとめて捕まえに
かかろうとする。
「いい大人がこそ泥なんかして、しかも子ども相手に二人がかり。おじさん達、恥ずかしくないの?」
 ぶかぶか帽子のガキは団員達をキッと睨みつけ、強気に食って掛かる。握る拳は微かに震えていた。
 団員達はにやにやと馬鹿にして笑い合い、意に介せぬ様子だ。
 ぶかぶか帽子はスゥ、と覚悟を決めたように息を吸い、素早く何かを取り出すような仕草で
腰の後ろ辺りに片手を回す。それを見た途端、団員達は顔色を変えて再び距離を離した。
「このガキ、トレーナーか。チッ、最近はこんなガキの内からポケモンを買い与えてもらえるのかよ」
「面倒だが、どうせガキの連れているポケモンなんざオタチやコラッタがいいとこだろう。
俺のゴルバットでさっさと叩きのめして――」
 ぶつくさと文句を言いながら団員達はモンスターボールを取り出そうと腰を探りだす。

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