第43章


[01]


 ・

「ドンとマニューラ、二匹の出会いは分かった。でも、どうして二匹は、それとニャルマーも、
ジョウトから遠路遥々シンオウまで来る事に? 逃亡者のドンとニャルマーはまだしも、
マニューラにはちゃんと帰るべき里があるんだろう?」
 まさかやんちゃが過ぎて勘当されちゃったとか? 冗談っぽくエンペルトはそう言葉を続けようとしたが、
途端にドンカラスの顔に暗い影が差したのを感じ取り、はっとして口を噤む。
「ああ、今となっては”ある”じゃあなく”あった”だがな。あっしに、あっしらにもっと力がありゃ……
悔やんでも悔やみきれねえ、忘れたくても忘れきれねえ、炎の記憶……ま、追々話していくとしやしょう」

 ――一行に子ニューラを加えたあっしらは、里まで案内させるための交換条件である”紅葉が見たい”
という願いを叶える為、一路エンジュシティを目指した。道中、子ニューラの奴は相変わらず
マフラー野郎にべったりな様子でうきうきとして話し、マフラー野郎もそれに穏やかに応じていた。
あっしとニャルマーは小煩そうにしながらも、仕方なく同行していく。傍から見りゃまるでお気楽な
旅行でもしてるみてえだった。
 あっしらは逃亡者の身だってのに、果たしてこんな調子でいて大丈夫なんだろうか。あっしは一羽、
何ともいえない焦りのようなものを抱き始めていた。アジトの一つからはどうにか逃げ出せたとはいえ、
まだまだ安心は出来ねえ。かつてのジョウトには、そこら中の町に表向きはうさんくさい商店や
ひと気のない倉庫に偽装したロケット団の小さな拠点が、害虫の巣の如く蔓延っていた。ジョウト自体から
脱出でもしねえ限りとてもじゃないが安全とは言い難い。


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