第42章


[02] 


 人間やそれに連れられたポケモン達にとっては洞窟に入る前の良い休憩所になるのであろうが、
野生である俺達にとってはそうはいかない。回復を終えて気力に満ちたポケモンを連れたトレーナーが
いつその中から飛び出してくるかもしれない危険地帯だ。俺達は迂回して裏手の林の中を慎重に歩んだ。
 その途中の事。
「だーかーらー、そんなモンいらないって言ってるだろ!」
「まあまあ、坊ちゃん、そんなこといわずに見てってくれよ。これ、とっても栄養満点で美味しいんだから!」
 林の外から、人間の言い争う声が聞こえてくる。何をやっているのかは分からんが、
触らぬ神に祟りなしだ。気づかれない内に通り過ぎてしまおう。
「何だろ?」
 そう考えている俺をよそに、アブソルが興味深そうに声がする方へと顔を向ける。
「”おいしい”……?」
 更に、ぼんやりとしていたムウマージが途端にスイッチが入ったように目を輝かせて呟いた。
「お前達、人間と余計な関わりは無用――」
「いってみよ、アブソルちゃん!」
「うん!」
 俺が止めるのも聞かず、二匹は声のした方へとウキウキと駆けていった。
「あ、こら! 待て!」
 神は、触らずとも向こうからやってくる。少なくとも俺に憑いているヤツはそうだ……やれやれ。


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