第41章


[03] 


「待ちなさい。私達の前に一匹でのこのこ姿を現して、ただで逃げられると思ってんの?」
 本物のミミロップがびしりとコピーを指差して言う。コピーは足を止め、ちらりと横目で本物を見やる。
「なぁに、今の。新しい手品か何か?」
「み、水の……波動よ」
 少しばつが悪そうにして答える本物に、コピーは吹き出すように笑った。
「い、今のが?きゃはは、その辺の子ニョロモの方がまだ強力なのが撃てるんじゃない?」
「う、うるさい、とにかく逃がさない!」
 やる気満々な本物に対し、面倒くさそうにコピーは耳をかきあげる。
「私は忙しいからこれ以上あんたと遊んでる暇なんて無いの。伝説の何ちゃらの手がかりを探さなきゃいけないし――っと、ちょっと喋りすぎちゃった。どうしても遊びたいのなら、私の可愛いペット達の一部を紹介してあげるわ」
 辺りに急に不可思議な甘ったるい匂いが立ち込め、それに引き寄せられる様に、周りの森から耳につく独特な羽音が沸き起こり、こちらへ向かってくる。
その内の一匹が、先陣を切って橋の上まで飛び上がり、一対の鋭い針を構えて俺に突きかかった。
寸での所で俺はレール上に伏せてかわし、すれ違いざまにすかさず電撃を見舞う。
直撃にたまらず襲撃者の一匹は墜落していく。しかし、所詮一匹を倒したところで、もう既に俺達は羽音の群れに取り囲まれていた。両手と、黄色と黒の縞模様の尾から伸びる鋭い針で今にも再び突きかからんとして、殆ど感情を感じない赤い両眼で睨みを利かせながら俺達の周りを飛び回っている。
「スピアーちゃん達よ、可愛いでしょ。蜂って従順で好きよ。それじゃあ私は帰るから、精々頑張ってねー」
 悠々とコピーは去っていく。後を追おうにもスピアー達に阻まれ、追う事が出来ない。
「ま、待て!クソッ」

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