第40章


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「だが、私はどこを見ても鼻高々な輩共が肩を張り合って闊歩しているような世界よりも、小さな砂利共でも好き勝手転げまわれる余地がある世界の方が良い」
 途中、尻尾を向けたまま、言い捨てるようにしてキュウコンは呟いた。
 ――まったく、こやつは……
「もう少し真っ直ぐになれればもっと生きやすいだろうにな。俺も、お前も。厄介なものだ。
……激励に感謝する。必ず奴らの企みは止めてみせよう」
 ふんと鼻を鳴らして、キュウコンは暗闇の中に滲んでいった。

 その姿を見送りきった後、俺は支える糸が切れたように力が抜け、ごろんとその場に身を横たえた。
 ろくに休む間もなく、また直ぐに発たなければならぬか。だが、これは己で選んだ道。
平穏、安息は許されない覇者の道。分かりきっている。弱音も、文句も、吐くことはせぬ。
ただ今は、今ばかりは束の間の休息を――。


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