第40章


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 俺がいない間に過ぎ去っていた時間は、思っていた以上に不安と不信感を植え付けてしまっていたようだ。
最早、口先で誤魔化すのは難しい。だからと言って、今までの出来事を洗いざらい話したところで、あまりに現実離れした話に、気が触れて出任せの妄言を吐いているように思われるだけではないのか……。
「確かに今までの僕達は頼りなかったかもしれない。だけど、修行を積んで心身ともに少しは成長したつもりです。
だから、もう少し僕達の事を信用してください。あなたの背負うものを少しだけでも任せて頂けませんか。
配下としてだけじゃない、あなたの仲間として、どうかお願いです」
 ――そうだ。こやつらは仲間だ。何よりも信用すべき者達だというのに、俺は……。
 全てを話そう。例え気が触れた戯言だと思われようと、それは仲間を騙し続けた俺へのツケだ。

「……分かった、話してやろう」
 腹を決め、俺は口を開いた。途端に曇っていたロズレイドの表情が晴れる。
まずはどこから話すべきなのか悩みながら、次の言葉を発しようとした時、
「お待ちくださいな」
 室内に高く透き通った声が響き渡る。その瞬間、周りの空気が全て固まってしまったたような感覚に包まれた。
目の前のロズレイドも、まるで瞬間的に凍り付いてしまったかのように動きを止め、瞬き一つ無く完全に静止している。
「やはり少し困ったことになっていましたわね」
 声と共に空間をすり抜け、俺の隣にミロカロスが降り立つ。続けて部屋の角の薄闇から滲み出るようにキュウコンが現れ、ボーマンダは最初からそこにいたかのように物音もなくいつのまにか室内に鎮座していた。
その立ち振る舞いに、つい先程まで酒に酔っていた気配など微塵も感じさせない。


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