第40章


[13] 


 あくまで何気ないといったふうにロズレイドは口にする。
だが、その言葉にはどこか鎌を掛ける意図を含んでいるように思えた。
「ただの偶然、思い過ごしであろう」
 胸に沸く僅かな動揺を隠して、俺は答える。
「……そうですかね」
 ロズレイドは呟き、それ以上は何も言わなかった。まさか、神々の正体を悟られているはずは無い。
きっとこやつは奴らの派手な見た目に、妙な神秘性を感じていた程度に過ぎないのだろう。
奴らに接触する時は細心の注意を払っていたつもりだし、隠し切れないような大事に巻き込まれた後は、
奴らの介入によりこやつらの記憶は改変されているはずだ。

 微かな寝息も聞き取れるような沈黙の中、俺達は寝室までたどり着き、アブソルをベッドの一つに運び込んだ。
同時に、疲れきっていた俺も、もう一つのベッドの脇に背を持たれかけさせてへろへろと座った。
まったく、子どもの癖に、何と言う重さだ……。俺一匹ではとてもじゃないが二階まではおろか、食堂を出る前にへばり切っていたかもしれない。礼を言おうと俺はロズレイドを見上げる。

「やれやれ、僕が起きていなかったらどうするつもりだったんですか」
 呆れたような仕草をして、ロズレイドは溜め息混じりに言った。
「ふん、お前の手など借りずとも、その時はまた一匹で何か別の方法を探していたわ」
 感謝するつもりが、その嫌味な態度についつい俺は顔を背け、いつものような憎まれ口を叩いてしまう。
でも、どうせこやつのことだ。強がりだと見通されて、いつものように「はいはい」と笑い飛ばすことだろうと、ちらりと俺は横目でロズレイドを見る。しかし、その眼差しはいつになく真剣で、少し悲しげな光を帯びていた。


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