第40章


[01] 


「これからお前達はどうするつもりだ?」
 すぐにでも潜り抜けて駆けて行きたい、逸る気持ちを堪え、俺は尋ねる。
「折角の自由。今しばらくは私なりに堪能させていただきますわ」
「そうか。路頭に迷いそうになった時は、いつでも我が下を訪ねるがよいぞ」
「ふふ、考えておきましょう。では、お元気で。波乱万丈な人生を謳歌してくださいませ」
 行こう、俺はアブソルの肩に手を置き、共に入り口に向けて歩みだした。
「任せたぞ――」
 光に包まれる直前、微かだが確かにギラティナの声が聞こえた。

 ・

 幽霊騒ぎが収まったことを聞きつけ、洋館にも徐々にポケモン達の姿が戻りつつあった。
しかし、その表情は皆一様に暗く沈み、館内は異様な程に静まり返っている。
ドンカラスも何とか活気を取り戻そうとしたが、虚しく空回りするばかりであった。
 テレビルームで一羽ちびちびと不味い安酒を惰性で飲みながら、ドンカラスは真っ暗なテレビの上の止まった壁時計を見上げる。
以前に悪酔いして――本人に記憶は無いが――暴れた拍子に落としてから、中心の大きな歯車が外れて無くなってしまい、動かなくなったものだ。
どんなに歯車の一つが奮闘しようと、ぽっかりと中心に隙間が開いていてはうまく噛み合わず、空回りをするだけ――
ドンカラスはカタカタと虚しく微かな音だけを立てる壊れた時計に己と洋館の現状を重ね、苦笑と共に溜め息を零した。


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