第39章


[33] 


激流のような激しい怒りの感情をあらわにして、パルキアは全身をのたうたせて抵抗する。
 投げ飛ばされた俺は、そのまま祭壇の下にびたんと腹から叩きつけられた。ごほ、と乾いた反吐が漏れる。

「っ……!」
 神体はパルキアを押さえつけながら俺の方に首を向け、半ば呻くような声で何かを訴えかける。その一瞬背けた横顔を、鞭のようにしなる尾が強かに打ちすえた。宝石の如き外観にその強度も兼ね備えた鱗が、びっしりと隙間なく生え揃う尾の一撃。太く巨大な石の棍棒で殴られたのと違わぬ強烈な衝撃に、倒れはせずとも巨体の手元が少し弛んだ。

 隙を逃さずパルキアは拘束から抜け出し、全身から薄桃色の眩い光を放つ。光を浴びた神体は苦悶の咆哮を上げて暴れた。頭を抱える手の合間から黒い雫が一筋零れ、やがて全身の甲殻の隙間という隙間から、体液のように黒い影を噴き出させながら地に伏した。

「汚らわしい。網の目を抜けやすい小さなネズミを介して侵入といい、随分と小賢しい真似がお得意なようで」
 流れ出て溜まった影を、冷たい憎悪に満ちた目で見下してパルキアは言い放つ。
「貴様らのやり方に倣ったまでよ。丁度アルセウスが我が領域にそやつを送り込んで来た時のように」
 影の”溜まり”がぶくぶくと泡立って声を発した。 



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