第39章


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「かつて、幾つもそうした地が生み出されては、意向にそぐわぬと破棄されていった。
神の管理無き未完成な世界の辿る道、その末路は惨憺たるものだ」
神体の喉が不機嫌にぐるぐると唸る。
「世界は大きな幼子のようなものだ。ちゃんと手を引いて導いてやらねばすぐに転び、道に迷ってしまう。思うよりもずっと脆く、か弱く、手のかかるものよ。
何も手を出さず放ったままでいて、いつまでも無事でいられるわけがあるまい。
……事実、アルセウス健在時には決して起こりえなかったような異常が今、お前達の世界には起き始めている。お前も目にしたであろう。精巧な己の複製を」
脳裏に、忌まわしい冷笑を浮かべた"奴"の顔がはっきりと思い起こされる。
自分と同じ顔をしているが、自分じゃあない。ミュウツーが作り出した俺のコピーのものだ。
ハナダの洞窟奥で遭遇した時の嫌悪感が再現され、全身の体毛が逆立つ。
「我らが神の領域に土足で入り込んで踏み躙る、傲慢でおぞましい生と死への冒涜だ。
本来であれば世界自身の自浄作用にもより、何者が試みようと決して成功することのない存在だった。
例え体が作れようと、そこに魂は宿らず、すぐに肉体は朽ち果てる――だが、例外が起きてしまった。
最早、私にすら先の予測がつか――――世界に何が……か……ないのだ」


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