第39章


[20] 


 びくん、とパルキアの体が一瞬大きく揺れる。途端に爛々としていた目の輝きは消えうせ、巨体は糸が切れたようにその場に崩れた。
「これは、やったのか……?」
 もうもうと砂が舞い上がる中、一匹呆然として誰にでもなく呟く。
いや、完全に動かなくなったのを確認するまで、とても安心など出来ない。
相手は神であり、元より完全無欠に近しい生命体として名高い竜でもあるのだから。

 俺は砂埃が晴れるのをじっと注意深く見張る。砂の合間から見えるのは、倒れたままの巨影。もっと傍でしっかり確認しようと、にじり寄るように近づいていく。
 ――なんだこれは。
 近寄ってよく見て、思わず俺は後ずさった。パルキアの体にどろどろと脈打つ影が纏わりつき、すっぽりと全身を覆っている。乳白色に煌びやかに輝いていた姿は一変し、まるで黒い蛹のようなおぞましい姿と化していた。

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