第38章


[35] 


「それは……」
 ロゼリアは言葉を詰まらせる。ニューラの言葉が思わぬ程深く突き刺さっていた。
 組織の四天王に名乗り出たのはほんの軽い気持ちだった。尊大なピカチュウと勝ち気なミミロル。組織というにはあまりに頼りない規模と顔触れだ。最初の内、ごっこ遊び程度のもので収まるだろうと当時スボミーだったロゼリアは思っていた。まさかそれが、地方を股に掛ける大きな本当の組織に成長していくなんて誰が想像できようか。頼りなかった顔触れにも、ドンカラスやマニューラを筆頭にどんどんと実力ある強力な面々が加わった。
 自分よりも余程四天王に相応しいであろう逸材も多くいる事はロゼリアもわかっていた。キュウコンの言葉や、目の前で見せ付けられたマニューラの強さに深く思い知らされた。だからこそ名に恥じぬよう努力しようとしているのだ。それなのに――。
「さっきまでの威勢はどうしたんだっつーの。やっぱお前みたいなヘナチョコにゃ似合わねーよなぁ」
 そう言うと、ニューラはどこかから光の石を取り出す。
「これを俺から取り返すことすらできやしねえもんな。なあ、やめちまえよ。てめーより俺のがまだ相応しいっつの」
 そしてロゼリアへ掴み掛かろうと、片手を伸ばした。
「――馬鹿にするなぁ!」
 ――こんな奴に、これ以上足を引っ張られてたまるもんか!
 心底頭にきて、思わずロゼリアはニューラの手を振り払い、構えていた毒針を伸ばして突きかかった。思わぬ反撃にニューラは一瞬度胆を抜かれる。だが、すぐに体をそらし、脇腹に少しかすっただけに留めた。
「ッ――てめえ!」
 舌を打ってニューラは、ぜえぜえと肩で息をするロゼリアを思い切り壁ぎわへ蹴り飛ばす。
「冗談じゃすまさねえぞ。悪いのは先にマジになって仕掛けてきたてめえだからな……」
 ニューラの目の色は、獲物を狙うハンターのそれにぎらりと変わっていた。二本の鉤爪を勢いよく飛び出させ、じわじわとニューラは壁ぎわで膝をつくロゼリアに詰め寄っていく。


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