第38章


[29] 


 メスのニューラは石盗りのニューラの事を告げているのだと、ロゼリアはすぐにピンと来る。
 ――あいつ、まだ懲りていないんだ!
 信じられないという思いと、怒りにロゼリアは肩を震わせる。自身の弱さや、企みを見破れなかった軽率さにも責任はある事は分かっている。それでもロゼリアは許せなかった。
 あいつは僕だけじゃなく、結果的にマニューラさんまで巻き込んだんだ。
 石盗りは再び隙を見て何か仕掛けてくるだろう。そこでまたいいようにやられているようでは、マニューラは再び自分を庇って危険な目にあうかもしれない。それだけは絶対に避けたかった。マニューラの事情を知った以上、尚更もう不様な姿を見せたり迷惑をかけたりしたくない。
 事が起こる前にこちらから先手を打たなければ。誰の力も借りず、自分の手だけで。ロゼリアは考えをめぐらせる。
「どーしたわけ? 疲れたんなら、代わったげるけど」
 難しい顔をして手を鈍らせているロゼリアに、メスニューラは少し怪訝そうに声をかけた。
 そうだ、このニューラさんとはちゃんと和解できたじゃないか。ロゼリアはメスニューラを見やり、思う。それならあの石盗りとでも誠意をもってしっかりと話し合えば、争うことなく解決できるかもしれない。あいつのやったことは許せないけれど、だからといって憎んだままじゃ同じ事の繰り返しになる。
「すみません、ニューラさん後はお願いします。僕はちょっと用事ができました」
 ロゼリアはすくっと立ち上がり、メスニューラに綿を手渡す。まずはこちらから歩み寄ってみよう。ロゼリアは決心し、部屋を飛び出した。
「なあに、あれ?」
 メスニューラは首を傾げ、マニューラと顔を見合わせる。
「さーな。くだらねーこと考えてなきゃいいが」


[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.