第37章


[05] 



 高ぶる感情を振り切るようにミミロップは水場へと走った。
弱音は存分に吐きながらも、芯の方は折れることなくルカリオの教えに食い下がってきたミミロップだったが、
少しずつ蓄積された心身の疲れ、特に精神の疲れによって小さな軋みが生じていたのだった。
 澄んだ冷たい水を両手ですくい上げると、熱を冷ますように顔をばしゃばしゃと洗う。
水を滴らせながら、ふう、とミミロップは一息をついた。
そして、昔にルカリオの下から逃げ出した際も修業がこれくらいの段階だったかなとぼんやりと思い出す。
直情型の彼女にとって、教えのように心を清流のように澄まし静めさせているというのは、ひどくやり辛いものであった。
沸き起こる感情を無理矢理押し殺している内に、自分自身というものも少しずつ削れていっているような気がしてきて嫌だった。
 昔の自分はそれに耐え切れずに逃げ出してしまったが、今の自分はどうだろうか。
進化し、ミミロルだった時とは違う顔を水面に写し、悶々と思いに耽る。
 ――この姿になったのはピカチュウ達と初めてキッサキに行った時だっけ。
ほとんど勝手に洋館を出て来ちゃったけれど、みんなどうしているかなあ。そしてピカチュウは……。


[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.