第37章


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 ――ダメね、やっぱり点かない。
 何度試しても、依然として拳は燃え上がらない。それでもミミロップは、
焦りや動揺を悟られぬ様に心を静めて毅然と構え、他の手立てがないかを考えた。

「大丈夫かい、アニキ!」
 弟分のヤミラミは体の結晶から煌めく光弾を放ってミミロップを牽制し、
兄貴分へと素早く駆け寄って肩を貸す。
「ああ、転んだだけだ。どうということはないさ、兄弟」
「それにしても、アニキまでしくじるなんて……。なんて運がいい奴なんだろう」
「いいか、兄弟。二度だ。二匹がかりで仕掛けて二度もしくじった。
これは奴の運が良くて外れたんじゃあない。実力で外されたんだと認めざるを得ない。とんだ計算ミスだ」

「うう、じゃあどうするんだい。アニキ」
 まごついた様子で、弟分は言う。
兄貴分は、じっと隙を見せることなく身構えているミミロップを見やった。
そして、宥めるように兄貴分はそっと弟分に言い聞かせる。
「よおく奴を見ろ。冷静沈着を装ってはいるが、師匠の言い付けを破ってまでこっそりとついてくる辺り、
反骨精神に溢れた、本当は気の強い感情をあらわにするタイプと見た……!
 こちらから攻めてはいつまでも冷静に捌かれる。ならば、あちらから来させればいい。
言葉でなじってやれば、巣をつつかれ怒ったスピアーのごとく、
隙だらけで愚直に向かってくるだろうさ。そこを仕留めるんだ。後出しで冷静、確実に」
「う、うん……アニキを信じるよ。でも、そんなにいい悪口があるのかい?」
 任せろ。兄貴分のヤミラミは厭わしい笑みを浮かべた。


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