第37章


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 殴り飛ばされヤミラミは地を転げ倒れる。しかし、何事もなかったかのようにすぐにヤミラミは起き上がった。
「ヘヘ、びっくりしたけど全然痛くないや。やっぱりこいつ大したことないよ、アニキ」
 殴られたヤミラミはけろりとして兄貴分らしいもう一匹に言う。
「ああ。だがもうヘマはするなよな、兄弟」
「わかってるよ。まぐれでかわされたりなんて、もうしないさ」
 そう言葉を交わすと、二匹はそっと闇に紛れて再び攻撃する機会を窺う。

 拳は確実に奴の体を捉えられたはずなのに何故。手応えをミミロップは頭の中で何度も反芻しながら考えた。
奴らの体はそれ程までに耐久力が高いのか、はたまた寸前でうまく防がれて威力を削がれたのか。
それでも、全くの無傷というのはおかしい。打撃が全く意味を為さない相手――
ずっと前にもこんな輩と戦ったことがあったのではないかと、ミミロップの脳裏を微かな記憶が掠めた。

 答えが出切る前に、ヤミラミ達が再度の同時攻撃を仕掛けてくるのを、
ミミロップはヤミラミ達の一瞬の目の輝きと波導の流れで察知する。
上から飛び掛かる一匹をいなし、半歩遅れて駆けてきたもう一匹の足を蹴りつけて体勢を崩させた。
すかさずミミロップは隙だらけのヤミラミの後頭部の付け根辺りへと拳を振り下ろす。
もはや、かわすことも、防ぐことも出来ないであろう強烈な一撃。
ところが、またしてもミミロップに返ってきた手応えはどこか不明瞭なものだった。
ヤミラミは、やはり打撃をものともせずに起き上がり、追撃を逃れようと爪を振り回して暴れだしたため、
仕方なくミミロップは間合いを離す。


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