第37章


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 小さな建物ならば、ぐるりと巻き付き簡単に締め上げて押し潰してしまいそうな圧倒的な鋼鉄の巨体の前に、
臆する事なくルカリオは進み出た。
「私はルカリオ。鋼鉄島のぬしであらせられるハガネール様とお見受けする」
 ルカリオは敬意を払って、ハガネールに接する。年を経た老蛇の顔と体はひどくごつごつとして厳つく、
いかにも恐ろしげだったが、その眼は確かな気高い光を湛えている。
ヤミラミ達が言っていたような、独り善がりな暴君にはとても見えなかった。

「おお、そなたが噂に名高い波導の使い手か。よくぞ参られた。
いかにも、儂がハガネール。鋼鉄島の地下の長だ」
 ぎいぎいと金属の軋む音と共に重々しく響く威厳のある声でハガネールは答えた。
 辺りを覆う石のせいで波導をはっきりと感じ取れない今、
悪意を抱いていたとしても読み取ることはできないが、
それでもルカリオはハガネールが他を暴力で虐げるような輩には思えない。

 やはり何かおかしい。ルカリオはヤミラミへの不信感を強めていく。
上でヤミラミ達に感じた悪意は、ハガネールへの憎悪によるものだと思っていたが、どうも違うのかもしれない。


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