第37章


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 身の丈の二倍はありそうな岩の前に構え、ルカリオは呼吸を整える。
ミミロップとチャーレムは静かにそれを見守っていた。
ゆるやかに流れるような小さく素早い動きでルカリオは両の掌を突き出し、岩へと叩きつける。
瞬間、軽く突き飛ばしただけのように見えた動作からは似付かわしくない重々しい打撃音が響く。
岩はあっという間に表面を網目状のヒビに覆われ、後は小突かれただけで簡単に崩れてしまった。
 同じように岩を砕いてみせろとルカリオはミミロップに促す。
ミミロップは快く返事をして、同じくらいの大きさをした岩の前へ進み出た。
厳しい肉体と精神の鍛練を続け、もはや大岩を砕くくらいならば造作ない
――とまではいかないものの、やろうと思えば何とかできる自信はあった。
 拳を握り締め、深く目を閉じてミミロップは集中力をじっくりと高めていく。
そして限界近くまで達した集中を爆発させるように、拳に力を込めて大きく振りかぶり、裂帛の気合いと共に岩を殴り付けた。
たちまち岩には鉄球が衝突したような亀裂が入り、砕けた。
岩を殴った方の手に痛そうにフーフーと息を吹き掛けた後、ミミロップは誇らしげにルカリオの顔を見る。

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