第36章


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 ヒカリとナタネは老人を追って食堂へと向かった。先程の老人は浮浪者だろうか。
だがそれにしては身なりが整っていたように思った。 いくら食堂の中を探してみても老人の姿は見つからなかった。
窓は大人一人がくぐることができる大きさでは無いし、出入口は一つしかない。
確かに食堂に入っていくのを見たはずなのに。何だかますます背筋の辺りが薄ら寒くなってきて、二人は思わず身震いをする。
 食堂を出た時、二階に人影がちらついた気がした。老人はうまく自分達の隙をついて既に食堂から抜け出していたのだろうか。
老人にそんな機敏な動きができるのかは少し疑問だったが、幽霊だなんて考えたくはなかった。
再びポケモン達に先導させ、ヒカリ達は二階に向かう。

 その後も行く先々でまるで誘い込まれるようにヒカリ達を奇怪な出来事が次々と襲った。
まず最初に訪れた部屋では生きたように動く不気味で凶悪な顔をした人形だった。
凶器を振り上げ襲い掛かってくる人形から命からがら逃げおおせた先の部屋では、
触れてもいない洗濯機が勝手に動きだして大量に水をぶちまける。
それに堪らず部屋を飛び出せば、待ち構えていたホッケーマスクの大男に追われ、
逃げ込んだ別の部屋では今度は扇風機が強風を巻き起こした。
右手に鉄の爪をはめた怪人、火を吹く電子レンジ、叫び声を上げているようなマスクと黒いローブを被った死神――
手を変え品を変え、様々な怪物と現象がヒカリ達を休む暇も無く襲う。
怪物達はどれも映画か何かで見たような、それもよく見てみれば作り物とわかるようなどこか安っぽい作りの物ばかりであったが、
洋館の雰囲気と恐怖に飲まれ判断力が鈍ったヒカリ達には見破ることはできず、
半ばパニック状態になりながら逃げ惑うしかなかった。

「クハハ、ビビリ過ぎて奴らそろそろぶっ倒れるんじゃあねえですかい?」
 廊下を逃げていく少女達の背を見送りながら、全身に包帯を巻いたミイラ鳥が死神に話し掛ける。
「ちょっと悪乗りが過ぎた気もするが。もう十分に恐がらせたんじゃあないか?」
「そうだな。ハロウィンパーティもフィナーレといきやすか。締めはロトムの奴に任せやしょ」

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