第36章


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 それから数時間が経った後、ロゼリアの様子を見にマニューラが部屋を訪れた。
入り口の脇の岩をコンコンとノックし、返事もない内にマニューラは普段どおりの陽気さで中へと入る。
「よぉー、元気にしてるか?」
「はい……大丈夫です」
 返事も弱く、うつむいたままでいるロゼリアを訝り、マニューラは近寄って顔を覗き込む。
「どーした? ホームシックにはまだ早いぜ、ヒャハハ」
 ロゼリアは慌てて顔を拭う。そして、勇気を振り絞って、マニューラに話すことにした。
「――あの野郎、新入りいびりなんてダッセーことやってやがんのか」
 経緯を聞き、マニューラは苛立たしげに低く唸る。
「うちの馬鹿が悪かったな。オメーの石は取り返してきてやる。ただこういうのは問題があってなー……」
 何かを言い掛けたがそれを止め、マニューラは誤魔化すように自分の後ろ頭を軽く掻く。
「何ですか?」
「んー、オレが取り返してキツく言ってやっても、オメーがなめられたまんまなのは変わんねー。
またオレが見てねぇ所で同じような事をされちまうんじゃねーかってな」
 確かに馬鹿にされたままでは、マニューラの言う通りまた同じ事が繰り返されるだろう。
 ――自分は強くなるためにここに来たのだ。あんな下っぱのニューラに負けていてはとても強くなんてなれない。
「……わかりました、自分の手で石は必ず取り返してみせます」
 ロゼリアは真っ向から戦う決意をする。自らの手で石を取り返し、あのニューラを見返してやるのだ、と。
「本気か? ……へー、頑張りなよ。ま、今日の所はゆっくり休むといいぜ、じゃーな」
 そっけない素振りでマニューラは部屋を出ていく。だが、心の内ではロゼリアに感心を覚えていた。
 ――少しは根性がある。適当にあしらってその内に帰すつもりだったが、少しくらいなら真面目に見てやってもいいかもな。





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