第35章


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 繰り返される残虐な行いの数々。吹き出す血潮に弾ける目玉――そんな映画のワンシーンを、まるでバラエティ番組を見ているかのようにけらけら笑いながら、お菓子をつまみつつムウマージは見入っている。
その横で、ドンカラスは食べ物に手を付ける気にならず半ばげっそりとして、画面とムウマージの半々を末恐ろしく感じながら眺めていた。
 最近太り気味のドンには良いダイエットだ、と一緒に見ているエンペルトは皮肉めいて言う。
「ねーねー。がめんのおくになにかいるよー?」
 何度目かわからないムウマージの言葉に、ドンカラスは深くため息を吐く。
「あっしゃもう驚き疲れやしたよ……。今度は何だ。ホッケーマスクの怪人か? それとも鋭い爪したオッサンですかい?」
「こんどはそうじゃなくってさー。じっさいのテレビのなかー?」
「分けの分からねえ怖い事言わねえでくだせえよ……」
「むー!」
 真剣に相手をしてくれないドンカラスにムウマージはむくれたが、すぐにまた画面で盆踊りしている死霊達に夢中になり、テレビ自体に感じた違和感は忘れてしまった。






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