第35章


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 ロゼリアを掴み上げたニューラ――赤い方の耳の長さからして雄だろう――は怪訝な顔をしてロゼリアを見つめている。
「こ、こんにちは……」
 どうしていいのかもわからず、とりあえずロゼリアは手に吊り下げられながらも挨拶を試みた。
「おい、マニューラ。見るからに不味そうだがこれも食えんのか?」
 そうニューラにロゼリアを突き付けられ、マニューラは今やっとその存在を思い出したかのような顔をする。
「おーおー、そうだった。そいつの面倒見んのが条件ってやつなのさ。人質みてーなもんだから食うなよな。腹壊すぜ。
つーか前にも確かここに来たの見ただろーが。あのネズミちゃんと一緒によ」
「へーぇ。覚えてねえっつの」
 興味を無くしたのかニューラはロゼリアを放り投げ、木の実を抱えて自分の住みかへと帰っていく。
マニューラはうまく宙でロゼリアをキャッチし、傍らへと置いた。
「ほとんど全員居るようだし丁度いいや。オメーの事を他のニューラ共にも言っとかないとな。
オレが見てないところで知らずに料理されちまわねーようによ、ヒャハハ。――テメーら、注目!」
 号令をかけると、一斉にニューラ達はマニューラの方へ目を向けた。天井に吊されているレアコイルもじっと見下ろす。
「いいか、このおチビちゃんの顔をよーく覚えとけ。こいつは今日からしばらくウチで面倒見ることになっちまった大事な大事なお客サマだ。
腹が減りに減って、まかり間違って美味そうに見えたとしても、獲って食うんじゃねーぜ。……オメーからも何か言いな」
 ほれ、と背中を押され、ロゼリアは前に進み出る。ぎらぎらと光るニューラ達の鋭い目に内心びくつきながら、ロゼリアは口を開いた。
「どうも、皆さん。今日からお世話になるロゼリアと申します。どうかお手柔かに――」
「挨拶はもういいから何かやって見せろよ」
 壁を伝う螺旋状通路の階上に居るニューラの一匹が発した突飛すぎる申し出に、真意を測りかねてロゼリアは首をひねった。
「マニューラがわざわざつれてきたヤツだ。芸の一つや二つ絶対あるっつーの。なあ?」
 呼応して他のニューラ達も囃し立て始める。困り果てたロゼリアは助け船を求めてマニューラの顔を見やった。

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