第32章


[09] 



「オーケー。エーフィ、ぎりぎりまで引き付けるんだ」
 接近させるだと?
 近距離ではあのゴーリキーには明らかに分が悪い。遠距離から仕留めるのが定石だと思うのだが。
 エーフィは人間の指示に反することなく小さく返事し、慌てる様子も見せず立ち上がる。
「今だ!」
 ゴーリキーが間近にまで迫りその碗が振り下ろされた瞬間、エーフィは飛び上がって拳をかわした。
そのままゴーリキーの頭上を飛び越えると、無防備な背中を踏むように蹴りつけエーフィは更に高く跳躍する。
 なんと。
 背後からもミミロップ達の驚嘆の声が上がる。
「エーフィ、サイコキネシス! 投げ飛ばせ!」
 間を置かず飛ぶ指示に、エーフィは空中で額の宝石と目を輝かせ、
前のめりに体勢を崩され抵抗できないゴーリキーを容易く念動力で捕らえた。
そしてエーフィが宙返りするように体を一回転させると、大きな人型の体は回転に合わせて浮き上がり、
エーフィの見えない大きな背中に背負われて投げられたかのように、奥へ勢い良く吹き飛ばされていった。
 数秒後、豪快な着水音が響く。どうやら川に落とされたようだ。
流されていっているのか、怒りに満ちた咆哮もどんどん遠退いていく。
 何という無茶な……。だが、巧い。
相当の経験を積み、完璧な意思の疎通ができていなければ、トレーナーの指示越しにあんな真似はできん。
 ここまでポケモンと心を通わせているとは、悪い人間ではない――のか?



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