第32章


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「――とりあえずどんどん奥へ行ってみるしかないか。前に進まない事には何もわからないし始まらない」
 レッドはバッグの肩掛けを強く握り締め、気を入れるように背負い直した。
「僕が先に上の様子を見てくるよ。君達は後に続いてくれ。
そっちのアブソルとロゼリアは梯子を使うのは辛そうだね。リザードン、頼めるかい?」
 グガァ、とどこかやる気の無い返事をリザードンは返す。
渋々といった様子で身を少し屈め、背中をアブソルとロゼリアに差し出した。
 乗り込んでくるロゼリアを不機嫌そうにリザードンは睨んでいたが、
アブソルの時はまじまじと見つめた後に態度を一転させ、愛想良く背に迎えた。
 ふむ、神々しい何かに無意識が気付いたか?
「んー、数年後に期待というところかな」
 リザードンの呟きに思わず体の力が抜け、ずるりとよろけそうになってしまう。
 ……知らないということは、恐ろしいものだ。
 この不埒な羽トカゲに天罰がくだったところで、俺は一向に構わないのだが。むしろ大歓迎と言えよう。

  ※ ※ ※

 上の階は、天井まで届きそうな巨岩が無数に並び、行く手を阻んでいた。
 砕こうにも岩は非常に硬いものばかりで、カビゴンやリザードンの力をもってしても、
表面が抉れるだけで岩自体はびくともしない。
 壊しながら進むことは諦め、通路のように並ぶ岩と岩の間をおとなしく進むことを俺達は余儀なくされていた。
「まずは大まかな地形を知りたいな」
 そう言ってレッドが霊体であるムウマージに周辺の探査を頼んでから、十数分が経とうとしていた。
この時点――いや、ムウマージに頼んだ時点で嫌な予感はしていたと言うべきか。
 ようやく通路の先からムウマージがこちらに向かって飛んでくる――勢い良く転がる二つの巨岩を後ろに引きつれて。
「ごめーん、てきにみつかっちゃってたみたいー」
「ば、馬鹿者がぁッ!」
 転がる岩の正体は恐らくゴローン。最高速で転がる奴らに正面から挑むなど愚の骨頂。
加えて、今にも爆発しそうに赤く膨れ始めている。
 俺達は奴らを避けきれそうな空間を目指し、一目散に逃げ出した。




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