第32章


[19] 



 岩壁に丁度よく階段のように削れ低くなった箇所を見つけ、
レッドはそこから陸に上がるようカメックス達に指示を出す。
 俺達とムウマージは先に上へ行っているよう言われ、一足先に岩壁の上へと降り立った。
「ハニー……君と離れるのは非常に名残惜しいよ。何ならずっと乗っていてくれても俺は一向にかまわないんだが。
ああ、生意気なおチビさんの方はもう俺の背に用はないだろう。さっさと降りてくれ」
 ぴくぴくと口端が引きつるのを感じる。
「言われなくてもそのつもりだ」
 何があってもこいつだけは助ける必要は無いな。そう心に決め、蹴るように背を飛び降りた。
「自分で歩けるから私も降りるわ」
 ほぼ同時に背後から素っ気ない断りと着地音が響く。
「それは残念」
 ふん、いい気味だ。同時によくわからない安心感のようなものも覚える。


 洞窟は依然として広い奥行きを見せる。
すぐ先に、更に上の層に続くというのか梯子が備え付けられていた。
ここから見ても所々を錆付かせているのがわかり、年期を感じさせる代物だ。
「やあ、待たせたね」
 声に振り替えると、レッド達が石の段を登り終えこちらに向かってきていた。
アブソルとロゼリアも続いて姿を見せる。どうやらカメックスとカビゴンはボールの中に戻されたようだ。
「梯子か。まだ上の階があるようだね」
 うーん、と小さく唸りながらレッドは考え込む仕草を見せる。
「二、三年前にもグレン島の調査団がこの洞窟に来て逃げ帰ったらしいけど、あの梯子はもっと古そうだよね。
凶暴化したポケモン達。そして数日前に洞窟の辺りで目撃されたっていうロケット団らしき奴ら――
この洞窟、何だか益々きな臭くなってきたぞ」
 ロケット団……?
 奴らは三年前に壊滅したのではないのか。他でもないレッドと俺達の手で首謀者を倒したはず。
 この一件、奴らが関わっているというのか。



[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.