第31章


[04] 



 揺れは収まることなく激しさを増していく。周りの木々が揺さ振られ、がさがさと不安を煽る音を立てる。
「ちょ、どうしよう!」
「ゆれてるのー?」
「落ち着け、ただの地震ならばそのうちに収まる」
 恐慌をきたしかけているミミロップ達とポッポ達を、俺とピジョンは落ち着かせるように努めながら、
籠を隠させておいた場所へと急ぐ。番を任せているポッポ達の方は無事だろうか。
 横で地を駆けていたピジョンが不意に歩を止め、宙の一点を見上げた。それに伴って俺達も止まる。
「どうした?」
 視線の先には、木々の合間から覗くグレン火山の頂。黄昏に染まる空に煙を上げている。
「まさか、あれが奴の言っていた滅び……」
 そう呟くと、ピジョンは何かを覚悟したような表情をし、走りだした。
「急げ! あの火山がもし爆発するとなれば、ここら辺一帯が、いや、島中が高熱のガスと砕け散った
岩石の波に一瞬で飲まれるかもしれん。そして湯水のように溶岩が火口からあふれ出て残る全てを焼き尽く
しながら覆っていき――」
「ひえぇ!」
 ピジョンの解説にミミロップ達は悲鳴を上げ、揺れなど最早ものともせずに駆け出した。
ポッポ達も必死に羽ばたきを早める。


 隠し場所に辿り着くと、籠は有るがそこに見張りにおいた三羽の姿はなかった。
「あいつら、先に逃げたのか?」
「……いや」
 籠の影を見て俺は否定する。
 散らばった茶色の羽。深い傷を負ったポッポが一羽、籠の傍らに倒れていた。まだ息はある。
「何があった」
 俺はポッポをそっと抱え上げ、尋ねた。横からロゼリアが回復薬をポッポの傷口に吹き付ける。
「すみません、おかしなコラッタに襲われて……」
「他の二羽は?」
 ポッポは黙って首を横に振るう。
「……わかった。もう休むがいい」
「何ということだ……これではポッポの数が足りない。五羽ではとてもじゃないが島の外まで運んで逃げるのは無理だ」


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