第30章


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 びしりと叩きつけてやった拒絶の返答に逆上されることも覚悟した。
 だが、ミュウツーはそれとはまったくの逆、鼻の先であしらうように薄く冷笑じみた表情を見せる。
「言ってくれる」
「何度でも言ってやる。答えは、断固として拒否。お前のあまりに過ぎた思想には賛同できん」
 場に緊迫した空気が流れる。

「益々お前達が気に入った」
 一触即発の沈黙を先に破ったのはミュウツーだった。
「いいだろう。お前達には借りもある。この場は見逃す」
 そう言うと、ミュウツーは深く目を閉じ、両手を俺達の方へ向ける。
それと同時に体が奇妙な浮遊感に包まれ自由が利かなくなった。
 両隣から短い悲鳴が上がる。
「何よこれー! うえ、酔いそう……」
「念動力……ですか。強力な……」
 ミミロップとロゼリアも俺と同じ状態に陥っているようだ。
「――何をするつもりだ」
「この場は見逃す、と言った。屋敷の外にお前達を送り返す。次に出会う時、再びお前達に問おう。
拒み、私の前に障害として立ち塞がるのならば……敵は全力を持って排除しなければならない」
「俺の答えは変わらんぞ……!」
 体を覆う浮遊感はなお一層強まり、視界にちらちらとモザイク模様のようなものが混じりはじめる。
「最後に忠告しておく。外に着きしだい、島から一刻も早く脱出することだ。直にこの島は滅びる」
 散らばったモザイク模様は光の帯と共にうねり、徐々に感覚は遠退いていき――。



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