第30章


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 確かに人間共の振る舞いは目に余る。
「その話に乗った場合、他の我が部下達はどうなる」
 より根が深いのはミュウツーの方であろうが、その考えはよく似ていた。
「生命は保障しよう」
 シンオウのギンガ団、カントーのロケット団――数々の非道な行いをまざまざと見せ付けられてきた。
 だが――。
「断る」
 頭に過ったのは同じ人間でありながら、それらと戦ったあの者達の顔。普通であれば自身に及ぶ危険を
恐れて見て見ぬふりをするであろうに、あの者達は立ち向かった。
「このような陰気臭い地下に籠もっていては、この世が推し量れるものか。
 そのような黴臭い本だけでは人間の全ては学べん」
 名声のためでも、自分のためでもない。我らポケモンのために、だ。
「お前のやろうとしていることは我らポケモンのためではない。只の独り善がりな復讐だ」
 人間に懐柔されたわけでは決してない。
 借りは返す。それだけだ。
「構わんな。お前達」
「私はピカチュウについていくだけ。それにマシな人間も中にはいるのよねー」
「同じく。僕もまだそれほど人間に絶望してはいません」
 思いは一つか。

 そして何より――。
「俺はピカチュウ。いずれ全世界を掌握し、帝王となるものだ。
 帝王は誰かの下になど就かん。頂点は常に一つ!」
「あちゃー……」
「それは同意しかねます」


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