第30章


[18] 



 囲みを突破し俺達は駆け出した。後方から響くガーディ達の吠え声。
あるとも知れぬ活路を求め左に続く角を折れる。

 通路の右側に並ぶ閉ざされた部屋々々、突き当たりには鎧戸――人間が一人通れそうな大きな裂け目が真中に開いている。
追ってくる無数の足跡がもう角を曲がりきった。開くかもわからない部屋を一々調べる余裕はなく、鋼鉄製のシャッターにどうやればあんな裂け目ができるのか考えている暇もない。
目指すべきはあの裂け目の奥。迎え撃つにしても、足止めを仕掛けるにしても、幅のある通路よりは幾分かましであろう。

 裂け目の中に飛び込んだ先は広い部屋だった。中央に大きな机がぽつんと置かれている。他の敵の姿はない。
今駆けてきた通路の方を一斉に振り返り、構える。しかし、ガーディ達は鎧戸の数メートル手前で歩を止めた。こちらを睨んで唸り声を上げてはいるが、
その場をうろうろするばかりでそれ以上進んでこようとはしない。

「何なの?」
「さあな」
 理由はわからんが、今のうちにやるべきことはやってしまった方がいいだろう。
指示を出し、三匹がかりで――殆どミミロップの力だが――机をシャッターの前まで運び、裂け目を塞いだ。
「気休めですね」
「無いよりはいいだろう」

 改めて部屋を見回すと、床に色が違う箇所が所々あることに気付く。元々は何か置かれていたのだろうか。
そして、更に奥の部屋へと続く扉が一つ――。

「何だか、嫌な感じ……」
 半開きになっている隙間からも異様な気配を感じる。



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