第29章


[01] 




 そろそろ洞窟の出口が見えてきた。
 ようやくこの天然の冷凍庫から解放される。そう安堵の息を吐きかけた時、ある違和感に気付く。
 出口の脇に、不自然な出っ張りが出来ている。外から差し込む光に邪魔され、はっきりとした姿はわからないが、丸い耳のような突起がその影には確認できた。
 洞窟内を覗き込んでいると思われるその影は、少なくとも外に待たせているポッポ達のものではない。
 では何者か。双子島の原住民だろうか。何にせよその正体がわかるまで慎重に行動した方が良いだろう。

 忍び寄るには大人数は不利だ。奥に全員待機させ、俺は一匹、岩や氷柱の陰に隠れながら出口へと近寄っていく。
 ある程度の距離まで近付いて岩陰から覗き込むと、影はそろりと出口脇から四本足で姿を現し、洞窟内に入ってこようとしていた。
 俺は岩陰に身を戻して隠れる。侵入者は人間ではないのは確かのようだ。
 足音が徐々に大きくなりこちらの方へと近付いてくる。存在が気付かれたか?
 息を殺し、身構える。しかし、足音は俺が隠れる岩の横を通り過ぎていってしまった。そしてそのまま洞窟の奥に向かおうとしているその者の正体は――。
「――ペルシアン?」
「フギャーッ!」
 俺が背後から声をかけると、ペルシアンは叫び声を上げ毛並みを立たせて飛び上がる。
 ペルシアンは滑るようにこちらに振り向き、爪を伸ばして臨戦の体勢をとった。だが、すぐに俺に気付いたのか、ぴたりと動きを止めて構えを解く。
「ピカチュウ……かニャー? びっくりしたニャ、毎度毎度驚かせないでほしいニャー」
 驚かされたのはこちらも同じなのだが。
 とにかく敵では無かった事に安心した。後は何故ペルシアンがここにいるのかという疑問だけだ。
 とりあえず、すべては外を出てからにしよう。早く洞窟を出たい。


[次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.