第28章


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 巨大な氷の槍は洞窟を大きく揺るがし、厚く凍り付いた床を穿つ。激突の衝撃により槍は砕け、その破片は榴弾のように飛散し、俺達を襲った。
 直撃させる必要など無い、奴はこれを計算していたというのか。
 重傷までには至らないが皆そこかしこに傷を負い、距離が離れていたため難を逃れたピジョンと、マントにより多少は威力を軽減できた俺以外は戦える状態では無さそうだ。

 爆心地に残る鳥の形をした氷塊が、小さな音を立てながらゆっくりと表面に細かいひびを入れていく。
 ミミロップ達に、急いで安全な所まで退避するように言い、俺は充電しながら今にも動きだしそうな氷塊目がけ駆け出した。
 奴が執拗に狙っているのは俺だ、引き付けてミミロップ達が逃げるまでの時間を稼がなければならない。
 ひびは全体に広がり、脱皮するように青白い鳥が氷の殻を破って飛び出した。牽制に俺が放った電撃を氷の壁で易々と防ぎ、空へと舞い上がる。
 滑空しこちらに向かってくる奴に、すれ違いざまに直接攻撃を叩き込んでやろうと、跳躍し尾を振り上げた。だが、青白い鳥はあらぬ方向に飛び、尾は虚しく空をきる。
 反撃を予期しすぐさま電磁の壁を張るが、青白い鳥は俺の横を抜けそのまま飛びさっていく。その向かう先には、アブソルに助けられながら逃げようとしているミミロップの姿があった。
 ――あの時、無防備になっていたピジョンを無視してまで俺を執拗に狙ったと思っていた光線……俺のすぐ後ろにはミミロップがいた。
 もっと早く気付くべきだった、標的はあの時から俺ではない。奴の狙いはミミロップだ!
 既に奴はミミロップとアブソルのすぐ後ろにまで迫っている。風をきる音に二匹は振り返り、迫り来る青白い鳥を茫然と見上げた。
 全てを凍てつかせる無情な白い光が、奴に集うのが見える。



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