第26章


[02] 




 さて、疲れも少しは取れた。そろそろ出発するとするか。
 そう告げると、ミミロップ達はまだ休みたい、まだ見たいと次々に不平をならべる。ムウマージはいつも通りひとり、マイペースに漂っている。
 ここまで来れば恐らくもう少しだろう。そう言い、並べ積まれた不平不満を無理矢理突き崩す。うるさくブーイングしながらもぞろぞろとミミロップ達はついてきた。
 そろそろ空に薄く赤色が交じりだしている。暗くなる前に山道を抜けなければな。

 ほとんど崖のようだった山道を踏破し、ハナダシティ北東の小さな森にたどり着く頃には、空は赤色が大部分を占めていた。
 町には、名残惜しく友人との遊びを終えたであろう人間の子どもや、一日の業務を完了した大人達などの帰路につく群れが行き交い、非常に人目が多い。あれが人間! と興味深そうに町に出ていこうとするアブソルを叱咤する。
 さすがにあの人の流れに入っていく気にはなれない。ましてや図体のでかいのが一行に加わったのだ。俺達は無理をせず夕闇に紛れて進むために、紅が藍に支配されるまで少し森の中に潜んでいることにした。

 程なくして空は藍染され、辺りはすっかりうす暗くなった。
 人通りも随分と少なくなり、これならば街灯や建物の明かりを避けるように注意していけば、そうそう見つかることはないだろう。
 表立った通りを極力避け、縫うように光と光の間を慎重に進み、何事もなく――とは言えないが――ハナダシティを通り抜けた。アブソルが人間の家の窓を無防備に覗きこんだ時など、どうなることかと思ったが。
 そしてたどり着くは四番道路。おつきみ山は目と鼻の先なのだが――我が道は、すべてが楽に滞りなく進むことはないと、改めて思い知らされることになる。
 地中から突如伝わる震動。震動はどんどんと近づいてくるように大きくなり、目の前が突然隆起した。
 弾けるようにその地の瘤から飛び出してきたものは、鋭い刺で覆われた背中、指先に太く尖った爪を持つ四肢――サンドパン。
「イヤッハー! なーんか怪しい奴を発見、発見! この先は通さねーぞってのォッ!」
 有無を言わせず、飛び出た勢いのままこちらに爪を振り上げ襲いくる。


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