第24章


[01] 



 全身全霊を拳に込めダークライの胴を打ち抜く。たたき込んだ力は雷となって奴の中を駆け巡り、炸裂音を轟かせながら黒い暗雲を食い破るように体中から電流の帯が飛び出した。
 一瞬で内と外を同時に焼かれ、叫ぶ間も無く灰色の煙を上げながら悪意は地へと墜ちる。骨と古い布がくすぶるような嫌な臭いが鼻につく。
「――貴様になど懺悔する猶予も与えない」
 ぴくりとも動かないダークライを見下ろしながら俺は言葉を吐き捨て、手中にいまだ残る苦い電流の感触を握り散らした。
 表面張力を無くした水滴のように悪意の体は崩れ溶けていく。後には大きな黒い水溜まりだけが残った。塞がれた階段が元に戻る。

「アブソル!」
 名を叫びながら俺は倒れているアブソルの下へ駆け寄る。目を閉じ、返事はない。
 もう――駄目なのか? 心臓が押し潰されるような感覚、目の前がぼやけて揺らぐ。
「アブソルッ!」
「うるさいなあ――」
 ぱちりとアブソルが目を開けた。
 押さえ付けられていた心臓が跳ね高鳴る。幻ではないか確かめるために自分の目をこすり、ぼやける揺らぎを拭い取る。
「そんなに大きな声出さなくても、聞こえてる」



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