第23章


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 部屋に勢いよく飛び込むニャース達。
「そこまでだ! ……ニャー」
 ニャースは爪を伸ばし、びしりとダークライを指差す。だが、やる気が無さそうに付け足した語尾のせいで、どうにも決まらない。
 ――何も口調まで真似る必要は無いだろう……。
 ――何事も念には念を、です。

「死の律をビビッ――死ノ律ヲ乱ス愚者ニ裁キヲ」
 メタングが発する、ノイズ混じりの電子音で紡がれたその言葉に、神の威厳や凄味は無い。
 ――馬鹿馬鹿しい。
 ――お似合いですね、ギラティナ。
 二人を見るパラスの顔は笑いを堪えているように見える。

 ダークライは椅子に座ったまま、まるで地べたを這う虫でも見るような目で、じりじり距離を詰めてくるニャース達を見やる。
「まだこんな虫けら共が潜んでいたか」
 なめきった様子で右手だけをニャース達に向け、ダークライは波動を放とうとする。パラスは不敵な笑みを浮かべた。
 今までの緩慢な動きが嘘のように、ニャース達は素早く散開する。
 油断しきっていたダークライは、がたり、と椅子を揺らし、ニャース達の動きを目で追った。
 ――今です。
 ――この状態で止められる時は一瞬。抜かるな。



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