第21章


[05] 


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――ハクタイの洋館。

洋館のキッチンに何かを擦る様な怪しい音が響いている。
ドンカラスがすり鉢で何かをすり潰しているようだ。すり鉢の横には、半分に切られた刺々した緑色の木の実――とても苦いドリの実が置いてある。
テーブルの上には他に小麦粉やバター、麺棒等も用意してあるようだ。
「待ってやがれよ糞ネコが。あの激辛チョコの“お礼”をしてやらあ、クカカカカ……」
意地悪げな笑みを浮かべるドンカラス。
キッチンにはドンカラスの高笑いと木の実を擦る音が響き続けた――


――ニューラのアジト

いつもの広間で、マニューラは暇そうに氷のソファーに足を組んで座っている。
アジトの入り口に繋がる通路の方から、ニューラが気だるそうに広間に入ってきた。
「おい、マニューラ。ドンカラスの奴が来てるっつーの。入り口ん所で待ってんぞ」
「ああ? 何しに来やがったんだ?」
あくびをしながらダルそうにニューラは答える。
「わかんね。カーカーうぜーからさっさと行っとけ。昼寝もできやしないっつーの」
「そーか。ま、ヒマしてたとこだしアイツの間抜け面でも見て来るか、ヒャハ」
マニューラは氷のソファーからひょいと飛び降りた。ソファーが砕けて溶ける。
そしてドンカラスが待つ、アジトの入り口へと歩いていった。



アジトの入り口にはドンカラスが、何か小さな物を抱えて待っていた。
「よお、糞カラス。てめーからオレんとこに来るなんて珍しいじゃねーか。そんなにオレに会いたかったかよ? ヒャハハ!」
いつもの調子でマニューラは悪態を吐くが、
「その通りでさあ。会いたかったですぜマニューラ」
ドンカラスは顔色一つ変えずにさらりとそう言ってのけた。
「き、気持ちわりーな。何なんだ」
予想外の返答にマニューラは戸惑う。――只でさえ出不精な糞カラスが、まさかオレに会うために来るなんてありえねえ。何を企んでやがる。
ドンカラスはゴソゴソと小さな紙袋を取出し、マニューラに差し出す。
「これを渡しに来たんで。受け取ってくだせえ」
疑いの眼差しをドンカラスに向けながらマニューラは袋を受け取った。
「何だ、これ?」
「ま、開けてみやがれ」
マニューラは恐る恐る袋を開ける。中には手作り感が漂うクッキーが入っていた。
「……どーいうつもりだ」
へへっ、とドンカラスは笑う。
「今日はホワイトデーだろうが?あの時の例にな。ほら、早く食ってみなせえ。」
促され無言でクッキーを口に運ぶマニューラ。ドンカラスは心の中でにやりとほくそ笑んだ。

「んぐッ!?――」



「クカカ、ざまあみやが――」
「……旨えじゃねーか、ヒャハハ」
「な、何ぃ!?ちょ、貸せッ!」
ドンカラスは慌てた様子でマニューラからクッキーを奪い取り、自分もこっそり食べてみる。
「ヴッ!?やっぱ、苦ぇ、ゲホッ!ゴホッ!どうなて……」
「ヒャハハハハ!どーせこんなこったろうと思ってな――」
マニューラは口から、氷漬けになったクッキーを出す。
「この通り、だ。てめーがオレを嵌めようなんざ1000万光年早いぜ」
「うぐぐ……ちきしょう!ゴフッ、覚えてやがれよ!糞ネコぉ、ゲホッ!」
「ヒャハハ、おととい来やがれってんだ」
ドンカラスはクッキーの袋を投げ捨て、捨て台詞を残してふらふら飛び去っていった。
マニューラはクッキーの袋を拾い上げる。
「わざわざこんなもん作ったのか。ふーん……。」


――「こんな入り口のとこで何うずくまってんのさ?マニューラ?」
「ゴホッ、うるせー……ほっとけゲホッ!」

続かない

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